廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下:廃棄物処理法)では、廃棄物の処理に関するルールや、罰則等などが規定されており、事業者はこの法律にしたがって事業を進めていくことになります。全ての事業者には、自分が出した排出物を処理する責任があります。本記事では、産業廃棄物の処理の流れや、マニフェスト制度について解説します。
廃棄物処理法について
廃棄物処理法
第1条
この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
廃棄物処理法には、廃棄物の排出抑制と処理の適正化による生活環境保全を目的としてルールが設けられています。産業廃棄物は環境をはじめとして、人体にも悪影響を及ぼすものになります。内容としては、「法律の目的」「廃棄物の定義」「処理・保管等の方法」「罰則」などが記載されています。
産業廃棄物処理の方法

産業廃棄物の処理方法は、大きく分けて「中間処理」「最終処分」です。
中間処理
廃棄物処理法での「中間処理」とは、最終処分以外の中間的処理行為すべてを指します。最終処分は、埋め立てと海洋投棄だけですので、多くの処分業者は中間処分業者ということになります。中間処理を行った廃棄物は、エネルギーに変わったり最終処分されたりします。
以下に、中間処理の代表例を掲載します。
焼却
廃棄物を燃やして「燃え殻」や「灰」にする処理です。廃棄物の体積や重量を大きく減らすことで、埋め立てなどの処理をしやすくします。最近では、発電施設を併設することが多いです。
脱水
汚泥などの廃棄物から水分を取り除く処理です。含有率の高い汚泥をプレスを行い、水分を少なくする処理をいいます。
コンクリート固化
汚泥、燃え殻、ばいじん等にコンクリートを混ぜ固め、性状を安定化させる処理方法です。そのまま埋め立てるためにコンクリート固化する場合と、薬剤処理し固化後のものを粉砕し、再生砕石として利用する場合もあります。
最終処分
最終処分とは、中間処理後の産業廃棄物を「埋め立て」もしくは「海洋投棄」することです。海洋投棄も一部が例外的に認められているだけなので、実質的には日本の最終処分は「埋め立て」だけといえます。最終処分場には「安定型最終処分場」「管理型最終処分場」「遮断型最終処分場」の3つの種類があります。
| 安定型最終処分場 | 遮水シートや浸出水処理施設を設けなくて良いもの。埋め立てによって腐敗したりし汚水が発生するものは埋めてはならないこととなっており、埋められるのは「安定型産業廃棄物」の6種類のみ。 |
| 管理型最終処分場 | 腐敗するものや汚水を発生させるもので、有害物質や液状物以外のものを埋めることができる処分場。遮水シートと水処理施設の設置が必要で、維持管理には手間と費用がかかる。 |
| 遮断型最終処分場 | 安定型最終処分場、管理型最終処分場に埋め立てることができない有害物質を含んだ廃棄物を埋めることができる処分場。埋立箇所はコンクリート構造とし、上部は雨が入らないように屋根で覆われている。 |
マニフェスト制度について

産業廃棄物は、排出事業者が自らの責任で適正に処理することになっています。その処理を他人に委託する場合には、産業廃棄物の名称、運搬業者名、処分業者名、取扱上の注意事項等を記載したマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付します。
マニフェスト制度は、産業廃棄物の委託処理における排出事業者責任の明確化と、不法投棄の未然防止を目的としています。
マニフェストはもともと7枚つづり(A・B1・B2・C1・C2・D・E票)の紙媒体で、処理工程に沿って当事者が相互に交付し合っていました。しかし近年は電子処理でマニフェストをやりとりする「電子マニュフェスト」の利用が急増しています。
産業廃棄物の処理工程に沿ったマニフェストの動きは以下の通りです。
①交付
| 紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
| 排出事業者は収集運搬業者または処分業者廃棄物の引渡時に「A票以外のすべて」を交付 | 排出事業者は情報処理センター廃棄物引渡日から3日以内に電子登録 |
②運搬完了
| 紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
| 収集運搬業者は排出事業者運搬終了日から10日以内に「B2票」を送付 | 収集運搬業者は情報処理センター運搬終了日から3日以内に電子登録 |
③処分(中間処理)完了
| 紙媒体のマニフェスト | 電子マニュフェスト |
| 処分業者は処分終了日から10日以内に「C2票」を運搬業者に送付 処分業者は排出事業者に処分終了日から10日以内に「D票」を送付※最終処分も同時の場合は「E票」も送付 | 処分業者は情報処理センター処分終了日から3日以内に電子登録 |
④最終処分完了
| 紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
| 処分業者は排出事業者処分終了日から10日以内に「E票」を送付 | 処分業者は情報処理センター処分終了日から3日以内に電子登録 |
⑤排出事業者による確認
| 紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
| 排出事業者運搬終了:A票とB2票を照合 中間処理終了:A票とD票を照合 最終処分終了:A票とE票を照合 | 排出事業者情報処理センターからのメールを確認 |
⑥保管・報告
| 紙媒体のマニフェスト | 電子マニフェスト |
| 各事業者手元のマニフェストを5年間保存 排出事業者都道府県(もしくは政令市)に報告 | 各事業者マニフェストの保存は不要 排出事業者都道府県(もしくは政令市)への報告は不要 |
マニフェストに関する罰則規定について
排出事業者がマニフェストに関する義務に違反した場合は、「マニフェスト確認義務違反」以外は罰則の適用を受けます。また、委託業者が不適正な処理を行った場合は、排出事業者も委託業者とともに不法投棄された廃棄物の撤去等、措置命令の対象となります。
第27条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第十二条の三第一項(第十五条の四の七第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定に違反して、管理票を交付せず、又は第十二条の三第一項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票を交付した者
二 第十二条の三第三項前段の規定に違反して、管理票の写しを送付せず、又は同項前段に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票の写しを送付した者
三 第十二条の三第三項後段の規定に違反して、管理票を回付しなかつた者
産業廃棄物処理に必要な許可について

廃棄物処理に必要な許可は、大きく分けて3種類です。
①産業廃棄物収集運搬業許可
産業廃棄物収集運搬業許可とは、委託を受けて産業廃棄物を収集・運搬するための許可制度です。通常の許可に加えて、搬中に荷物の積み下ろしや積替えが認められる「産業廃棄物収集運搬業(積替保管あり)」という許可を含めて申請を行うことも可能です。
②産業廃棄物処理業許可(14条許可)
「14条許可」とは、排出事業者から委託を受けて産業廃棄物処理(中間処理)を行うための許可です。産業廃棄物処分業を行う際は、それぞれ業を行う区域を管轄する都道府県知事への許可申請が必要となります。
第14条
産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第十四条の三の三まで、第十五条の四の二、第十五条の四の三第三項及び第十五条の四の四第三項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない
③産業廃棄物処理施設設置許可(15条許可)
「15条許可」とは、産業廃棄物処理施設(中間処理施設)の設置に必要な許可です。産業廃棄物を脱水、焼却又は破砕等の方法で、中間処理を行う施設(中間処理施設)や埋立処分施設(最終処分場)を設置する場合は、処分する廃棄物の種類や施設の規模によっては、産業廃棄物の設置許可が必要となります。
第15条 産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施設、産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない
まとめ
廃棄物処理法では、廃棄物を発生させる会社が自分のゴミを自分で処理することを原則としています。自分で処理ができない場合には、廃棄物処理のプロである廃棄物処理業者に委託することが認められてるのです。委託のたびにマニフェストを正しく使用し、自分が出した廃棄物が、最終処分されるまでの行程を確認する義務があることも再度ご認識いただけると幸いです。


